▶︎ 小さなオルフェ
金森幸介(かなもり・こうすけ)のミュージシャンとしてのキャリアはフォーク・デュオ、小さなオルフェにはじまる。1970年、「みずいろのポエム / ロンド」でデビュー。所属レコード会社クラウンレコードでお茶くみをする水前寺清子を目撃するという幸運に恵まれる。しかし「チータほどの人でもスタッフにお茶を入れるのだ。キミたちも彼女のような立派な歌手になりなさい」とレコード会社の担当ディレクターから説教される。 同年、阿久悠作詞の「ブルース田園」を発表するものの、後年、阿久悠追悼番組にはお声がかからず。帽子を少し斜めにかぶったりするものの沢田研二にも見えず。ベレー帽をかぶっても桜田淳子ようにはなれず・・・・どこにいるのか?コースケの青い鳥。 本人の記憶によると「ブルース未完成」という阿久悠作詞の曲もあったとか・・・・その予言通り、「金森幸介・未完の大器」といわれて早40年。いつになったら花開くのか? それでも「ブルース田園」のB面に収録した「九月の風に」はMBS「ヤングOH! OH!」の今月の歌エンディング・テーマに。さらに金森幸介の躍進はつづく・・・・と思う? 関西テレビ「ヤング・マガジン」に都会の村人としてレギュラー出演。オマケに加川良とのラジオ番組「チャチャヤング」にも金森幸介はディスクジョッキーとして出演。「関西フォーク界のWヤング」・・・・とは誰もいわなかった。72年には都会の村人のアルバム『退屈しのぎ』を発表。シングル「退屈ですね / 窓をあけよう」「詩集 / さよならもいわず」も世に出す。翌年、I.M.O.バンドで活動。アルバム『Cata-Coto』を発表後に、収録曲「あきかんけってみよう」がまたしても「ヤングOH! OH!」のエンディング・テーマに・・・・とここまでが「金森幸介=ヤングな日々」・・・・である。 テレビやラジオ出演、バンド活動とアルバム、シングルの発表と貪欲にヒットを狙いにいく金森幸介であったが、打球は内野手の間を抜けることもなく75年、(懲りずに)ソロ・アルバム『箱舟は去って』を発表。時を同じくして五つの赤い風船 ’75 (今日でいうところのハロプロみたいなもの)にも参加。翌年にはソー・バッド・レヴューをバックにレコーディングした2nd.アルバム『少年』がレコード店に並ぶと、金森幸介はロサンジェルスへ。すると無謀にも海外レコーディングを敢行。バックには何よりも心強いソー・バット・レヴューのリズム隊。恵まれない天才ドラマー、ベーカー土居。迎え撃つはロサンジェルスきっての奇人変態常識人デヴィッド・リンドレー。しかしこちらには日本を代表する変態ピアニスト国分輝幸。怯むことなく金森幸介は「かけおち / 旅の途中」を録音した。 勢いづくと止まらない、まるでジャム・バンドのような金森幸介のワーカホリックな日々は、1975年で小休止を打つことになる・・・・というのはレコーディングという形態においてのみのこと。70年代後半からの彼はコールド・ラビッシュを従えブロークン・ウィンドウ(かなりハード・ロック)、さらには有山じゅんじ、内田勘太郎をそのバンドに加えたロックンロール・ジプシー(もっとハード・ロック・・・・というよりうるさい)を結成し、お得意の「喋くり」をエレキ・ギターに置き換えることとなった。80年代に入るとツゥイン・ドラム、スティール、エレキ、アコースティック・ギター、ハーモニカ、マンドリンからなる11人編成のバンド、ザ・メロウを結成。しかも全員がコーラスをとるというオマケつき・・・・その変幻自在の演奏活動を人は「ひとりインプロヴァイザー」と呼ぶ(何のこっちゃ?)。 そんな金森幸介が久々にアルバムを発表したのは20世紀も押し迫った1997年のこと。前年秋に野外音楽堂を借り切りレコーディングした『緑地にて』が彼の怒涛の快進撃のはじまりであった。99年には『静かな音楽となった』を、「こんなわたしをミレニアム」といっていた2000年『LOST SONGS』、翌01年には『金森幸介』、CD5枚組『50/50』をなぜか? 発表する。その翌年からは「金森幸介ライヴ・シリーズvol.1」(02年)「vol.2」(03年)も勢いよく発射!! そして2008年3月・・・・ホイホイレコードと手を組み、ライヴ終演直後に、その当日のライヴをレコーディングしたCD(-R)を発表する新たな行動に踏み出した。東京での4公演すべての会場(すべてセット・メニューは異なる)においてライヴ・レコーディングされ、その都度、ライヴCD(-R)ができあがるというシステム。これはなんとも新しい! 加えてアーティストとしては潔い!!姿勢である。なにしろ金森幸介本人は自身の作品でありながら、それを聴くことなく世に出てしまうわけなのだから・・・・このようなポップ・シンガーは日本には存在しなかった。それだけでチータのようにお茶くみをしなくても、客席よりも頭数の多いバンド活動をしていてもいいだろう。オールド・マンになっても金森幸介の「ヤングな日々」はつづくのである。
【discography】EP
1976 「かけおち / 旅の途中」(徳間音工YA1003)
【discography】LP/CD
1975-02-25 『箱舟は去って』(ビクター SF1050 / P-ヴァイン PCD-1508 / ビクターVICL62207)
(side A) 01. 何処へ / 02. 通り雨 / 03. 悲しみの季節 / 04. ぷろぽーず / 05. もう一人の僕に / (side B) 06. 片想い / 07. サルビアの花 / 08. 日向ぼっこが僕の趣味 / 09. 愛 / 10. 箱舟は去って / 11. 遠く離れて子守唄
1975-03-01 『少年』(徳間 YC-8005 / グリーンウッド GRCL-6022)
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(side A) 01. この美しい朝に / 02. なにもない俺だけど / 03. 重荷をおろして / 04. 冬真最終 / 05. もてないおとこたちのうた / (side B) 06. 気をつけろ / 07. 夢は / 08.今夜は君が / 09. 昨日・今日・明日 / 10. 少年 / (CD Bonus) 11.かけおち/ 12.旅の途中 / 13.今日を生きよう(LIVE)
1996 『緑地にて』(Hickory Wind Records Hick001)
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01. 緑地にて(空)/ 02. もう引き返せない / 03. 愛さずにはいられない / 04. 夢の中 / 05. Same Old Songs / 06. 緑地にて(風)/ 07. さくら / 08. だいじょうぶ / 09. Beautiful Night / 10. 緑地にて(光)/ 11. 水の重さ / 12. Circus Town / 13. Oh My Endless Summer / 14. 緑地にて(やすらぎ)
1999 『静かな音楽になった』(Hickory Wind Records Hick002)
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01. 静かにまぎれこんでくる音楽 / 02. Hey, Girl / 03. 静かな音楽になった / 04. 美しい絵を描く人達がいる / 05. Broken Heart / 06. Birthday Song / 07. 静かにまぎれこんでくる音楽 / 08. Life Goes On / 09. Shelter People / 10. 祈り / 11. Rock'n Roll Gypsy,part2
2000 『LOST SONGS』(Hickory Wind Records Hick003)
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01.蜃気楼のように / 02.ちがう言葉 / 03.ピエロのように / 04.Woo Baby / 05.君を愛していいかい / 06.摩天楼 Blues / 07.Rock and Roll Gypsy, part 1 / 08.地平線 / 09.P.S. Peace and Love / 10.太陽が折り返し地点 / 11.Lost Songs
2001 『50/50』
▲ track listing HERE
2002-07-24 『金森幸介』(MIDI Records MDCL-1428)
01. Soul Mate / 02. せつない恋は / 03. Help Me / 04. 大阪も雨に沈んでいるかい / 05. 静かな音楽になった / 06. ちがう言葉 / 07. ふたりは / 08. さくら / 09. 悲しい日々 / 10. 君の心の草原に渡る緑の風のように / 11. もう引き返せない / 12. 美しい絵を書く人達がいる / 13. 悲しみの季節
【videography】DVD
NOW and THEN (Hoy-Hoy Records HV00001)
2CD-R+DVD BOX SET more data / buy it
▲ track listing HERE
2012-02-24 『その気になれば』live at 神戸 James Blues Land - 中川イサト 金森幸介
(DVD Hoy-Hoy Records P10-0010) more data / buy it
01. 静かな音楽になった / 02. だいじょうぶ / 03. ひなたぼっこ / 04. 君を愛していいかい / 05.その気になれば / 06.ピートタウンゼント / 07. 君の声がしたから / 08. 蒼空 / 09. もう引き返せない / 10. Rock'n Roll Gypsy part2 / 11. 夕焼け雲
【similar】▶︎加川良 ▶︎西岡たかし ▶︎ いとうたかお ▶︎ 有山じゅんじ
▶︎中川イサト ▶︎斉藤哲夫